先日ライディングに関する質問を募集したところ
「プロもどこか修行に行って勉強するのか?」
というご質問を頂きました。
気になりますよね?
実はこの質問はとても深く、今後バイクレース業界全体が盛り上がってくれるように
私なりにも深~く掘り下げてみたいと思います。
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プロレーサーは元々速いのか?
まずはご質問の内容を振り返ってみましょう
興味本意な質問です。
プロレーサーは元々速いのでしょうか。
プロレーサーは我流で上手くなるのでしょうか。
プロにも何か理論を教える施設が有るのでしょうか。
野球なら競技人口が多いので、理論や指導方針がコロコロ変わるくらい毎年進化してるような気がします。
バイクってどうなんでしょ?
プロでもどこか修行に行って理論やテクニックを勉強するのですか?
この、「プロレーサーは元々速いのか?」という一つ目の疑問への私の返答はコチラです
プロの方も最初は素人ですので、現在の華やかな舞台に立つまでには相当な努力をされていますよ。
モータースポーツの世界にはプロのコーチと言う職業がほぼ有りませんので
我流と知り合いなどから学ぶという事を織り交ぜながらやっていると思います。
具体的に言うならば、近所のレーシングチームに入って先輩の指導を仰ぐやり方ですね。
“最初は素人” といえば例えばこちらの写真
今から8年前、ほとんどデビュー戦?に近かったような、そんな一「少年」のスタート前です。
レースではトップにぶっちぎられつつも、それでも諦めず本人は楽しんで走りきり、
その一生懸命な彼の走りを、毎週ホームストレート横で優しく拍手で迎えていた
お父さんの姿とセットで脳裏に焼き付いているのですが
彼の現在の姿がこちらです
そうです、今をトキメク全日本JSBクラス最年少ライダーの清末選手です。
お父さんと二人で来る日も来る日も練習に明け暮れ
徐々に頭角を現し4年後に九州チャンピオン獲得
その後全日本選手権にデビューし、今年はトップカテゴリーであるJSB1000クラスに大抜擢
カワサキサテライトチーム「阪神ライディングスクール」からエントリーするまでになりました。
彼のように、最近のトッププロレーサーは幼少のころからレースに親しみ
皆さんの目に触れた時には、若くして既にレーサー歴数年のベテランの域に達しているのです。
なので最初から才能があって速いわけではなく、努力の賜物なんですね。
ちなみに、最初の画像の同日行われたレースには、現在同じ全日本選手権で活躍する和田ルカ選手(写真のパラソルボーイです)
作本選手、片山選手、橋口選手、田尻選手、世界選手権で戦う鳥羽選手、真崎選手(コースレコードホルダーが岩戸選手だったり)
などなど、改めて確認したら豪華な若手九州ライダーのメンツが揃っておりました。
プロでもどこか修行に行って理論やテクニックを勉強するのですか?
プロにも何か理論を教える施設が有るのでしょうかという疑問と共に
この質問に対する私の答えは
純粋に体だけを使うスポーツと違い、バイクやタイヤ、その他パーツの進化が伴うという特殊な競技になりますので
ライディング理論はめまぐるしく変化をしており、新旧タイプが複雑に絡み合うのも特徴です。
トッププロの理論やテクニックの進化は開発の場で行われており(メーカー契約のライダーは普段開発ライダーも兼任しています)
進化したマシン、タイヤ、パーツに合わせ、ライダーが判断する事になります(簡単に言うとこんな感じです)
なお、最終的には開発したバイクを市販して利益を生むことがメーカーの目的となりますので
純粋にレースに特化しただけではなく、色んな大人の事情なども複雑に絡んできますので一概には言えない難しさはあります。
ライダー個人の技術に関して言うならば、他の競技に参加したりトレーニングを行い、それぞれが個別にスキルアップをされてあるようです。
半分ほどは聞いた話、半分は勘で答えていますので多少あやふやですが、
おおよそこんな感じだと思ってください。
「半分勘」の意味は私が本職ではないからです。これに関してはゴメンナサイと言うしかありません。
この世界に20年以上いると各メーカーのテストライダーさん等と話をする機会が多々あるのですが
彼らはテスト内容を口外する事は絶対にありませんし、テクニックに関する事も企業(と個人の)秘密ですので
こちらも気を遣って本質に迫る事もあまり出来ません。
レーサーのほとんどがSNSなどで細かい内容に深入りしないのは、守秘義務などが絡むという大人の事情がある為で、もっと色々話を聞きたいと思う反面、彼らの「職業とアスリートの狭間にある葛藤」がなんとなくわかるので結果こういうお答えになってしまいます。
当然同じメーカーの仲間同士では色んな情報交換はしているみたいですし、その世界に入れた一握りの人間たちの間では、様々な事が受け継がれているようですが、「企業の開発」という特許なども絡む特殊な環境である為、引退後も公に出来る事は少なく、華やかな世界に身を置く半面、墓場まで持っていかなければならない話も多々あるのです。
我々一般人からすると、色んな意味で過酷な世界だなとあらためて思います。
そんなある意味孤独と闘いながら、様々な手法で自身のスキルを高めていく姿は本当にカッコイイと思います。
プロに成る前に教えてくれる施設はあるのか?
という疑問ですが、それに対する答えは
レースに特化して教えてくれる機会であれば、鈴鹿のSRS(レーシングスクール)
茂木サーキットにもレーシングスクールがあると聞いたことが有ります。
あとは各サーキットで開催されるライディングスクール、(SPA直入やオートポリス)
福岡ならRSGスクールなど幅広いレベルの方に教えるスクールがあります。
という事になるのですが、最近のスクールは私のような教える事ばかり長くやっている人間だけではなく
柳川明校長をはじめ、元世界のトッププロレーサーの方が積極的に講師として参加される機会が増え
サーキット主催だけでなく、バイクメーカー、タイヤメーカー、パーツメーカー、ショップ
サーキット契約のプロライダーなどが全国で教えてくれています。
スクールでは、彼らが公開できる範囲の中で最大限の事を伝えてくれますので、
積極的に参加される事をお勧めします。
もっとレース界(バイク業界)が盛り上がる為には
少し話がズレてしまいますが、バイクレースというのは新型車の開発という一面の他に
プロスポーツという「ビジネス興行」の一面も持っていますので、
本来であれば裾野を広げる為に、子供達やこれからプロを目指す若者(若くない方も?)、
ファンの方やユーザー、プレユーザーの為にも、
広く積極的に情報公開を行ったり、教育施設が有ってしかるべきだと思います。
時代の流れと共に、メーカーも出来る限りの事をやっているのはわかりますがバブル期以降は衰退の一途を辿るばかり。
ここ数年こそ盛り返してはいますがヨーロッパやアジアに比べると、日本のバイク界の認知度は
いわば周回遅れの様相を呈し続けています。
世界のバイクメーカーの中でも高いシェア率を占めるのが日本製であるにもかかわらずです。
今回の質問者の方が仰るように、野球など競技人口が多いスポーツでは様々な進化が公になっており
その指導方法や理論に気軽に触れれる機会も多く、その分世間に知られ盛り上がっていますが
それに比べるとバイクの世界の進化は、技術こそ世界トップレベルにありますが
認知度があまりにも低すぎる・・・(^^;)
これは交通事故防止等の安全面にも通じる所が有ると思うのですが、
ただ単に「バイク=危険」なだけではなく、しっかりとした交通社会においての安全教育を徹底し
危険に対する認知度を高める事で相対的な危険回避法や楽しみ方を広く知らしめる事で
誰もが気軽に触れる事が出来る趣味やスポーツとして成り立って行くのではと考えます。
これをご覧になっているあなたも、バイクに携わる以上盛り上がってほしいと思っていると思います。
次回はその辺を踏まえ、業界全体を盛り上げる為や、若手ライダーの成長に必要な事を少し考えてみます。
本日もお読み頂き有難うございました!(^^)